谷口吉郎と古くなった建築

とても暑い日だったが、解体前のホテルオークラを描いておこうと思った。1962年に完成した本館はジャパニーズ・モダンの真髄と言われ、世界中から尊敬された名建築だった。

ホテルオークラ
ホテルオークラ

ヨーロッパのとある街を旅していると、その歴史ある建築風情に感動するとともに、何故日本にはそのような建築文化が定着しないのかと残念な気持ちになる事が多々ある。

ホテルオークラの設計者の一人である谷口吉郎は、スクラップ・アンド・ビルドによる古い建物の解体に心を痛め建築保存運動に尽力をした。最近でこそ保存運動が脚光を浴びることがあるが、谷口がその先駆けだった。明治村の設立及び初代館長を務め、取り壊される建築物があると聞くや否や現場に駆けつけ、まるで建築医師のようにその命を救ったと伝えられている。辛口で知られた建築家白井晟一も「守りにくい遺産を後世に残された業績はいつまでも師敬すべきものである」と書き残している。

そんな谷口吉郎の作品があっさり取り壊されることは、何とも皮肉な話に思えるとともに、歴史的な価値のある建築物は可能な限り保存をしていかないと、この国の建築文化及び町並み文化はいつまでも成熟はしないだろう。使い捨ての社会から持続可能な社会への変革は、当然のことながら建築や都市のあり方にも深く及んでいる。この先の未来、何人の谷口吉郎が現れるのであろうか。

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谷口吉郎(1904〜1979)
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