建築の方言

どこの街中でも駅を降りると、同じような商業ビルが並び、パチンコ屋の喧騒が聞こえる。商業地を少し離れた駅で降りると、見慣れたようなバスロータリーがあり、最近では街に暗い影を落とす高層マンションが、駅前でのおなじみの風景になってきた。そして郊外の拡がりは、並木のリズムに従うように、規則正しく作られた量産型住宅によって、遠くどこまでも続いている。

都市の断面を見てみると、まるで金太郎飴のように同じ表情の風景がどこまでも大量に生産されているのが分かる。そこで暮らす人々、一様に背中を丸めてスマホを覗き込む人々も、金太郎飴になってしまうのだろうか。

秋田県由利本荘市の日本海に迫る集落で、厳しい風雪に耐える木柵を見た。あるいは温暖な瀬戸内の女木島で「オーテ」と呼ばれる石積みの塀があった。姿形や素材こそ違うが、両者とも海からの風を防ぐために伝統的に用いられてきた建築のエレメントである。言語が地方によって訛っているように、建築にも方言というものがどこにでもあった。その地方で採れる素材を用い、それぞれのやり方で構築する。それは今に残る風土の建築というものなのかも知れない。

秋田県由利本荘の木柵と香川県女木島の石塀 どちらも海からの風除けである。
秋田県由利本荘の木柵と香川県女木島の石塀 どちらも海からの風除けである。

ある日、ありふれた標準語的な街を歩いていると、何やら方言で話しかけてくるような建築に出会った。おそらく設計者は、女木島に行ったことがあるのではないだろうか、と考えると少し楽しくなった。ある風土から学ぶことは、歴史や先人の知恵を知ることでもあり、無個性な現代の都市に方言のある建築を作ることは、殺風景なところに一石を投じてみるようで、どこか張り合いのあることのように思った。

石井修設計 梅ヶ丘の家
石井修設計 梅ヶ丘の家
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