食を扱った映画

冬の足音が聞こえてきた北関東で、蚕室がある民家の見学をしたことがあった。今ではもう養蚕はやめてしまってはいるものの、かつての家には、炊事以外にも生産という営みがあったことが分かる。養蚕、木綿、絹織、麻織。暖かな火を囲んでの仕事もあったことだろう。しかしながら、産業革命によって生産の負担は外部に分担され、現代の家は消費するだけの存在になった。

もしも家の中心はどこかと考えるならば、人類の最大の発明のひとつといわれる「火」をもって生産を行う場である台所や食卓なのではないだろうか。しかし、IHクッキングヒーターの登場でいよいよ「火」の生産すら存在が危なくなってきた。文字通り火が消えてしまったら人間力の退化だ!などと大げさなこと考えるわけではないが、原発事故以降、オール電化住宅のコマーシャルを、ほとんど見かけなくなったし、薪ストーブやらペレットストーブやらがブームになっているのだから分からないものである。

ところでいつの頃からか、食がテーマの映画をよく観るようになった。ほとんどの場合、料理に満足した人々が、幸せに映るから安心して観ていられるのだ。

・マーサの幸せのレシピ(ドイツ)
・英国王給仕人に乾杯(チェコ)
・食神(香港)
・南極料理人(日本)
・バベットの晩餐会(デンマーク)
・シェフとギャルソン、リストランテの夜(アメリカ)
・タッチ・オブ・スパイス(ギリシア)
・厨房で逢いましょう(ドイツ、スイス)
・エイプリルの七面鳥(アメリカ)
・星降る夜のリストランテ(イタリア)
・料理長殿、ご用心(アメリカ、イタリア、フランス)
・朝食、昼食、そして夕食(スペイン、アルゼンチン)
・スーパーサイズ・ミー(アメリカ)
・シェフ 三ツ星フードトラック始めました(アメリカ)
・スタンリーのお弁当箱(インド)
・かもめ食堂(日本)
・食べて、祈って、恋をして(アメリカ)
・レミーのおいしいレストラン(アメリカ)
・ソウル・キッチン(ドイツ)
・オリンダのリストランテ(アルゼンチン)
・ディナーラッシュ(アメリカ)
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つい忘れてしまった映画もあるのだが、もしもこの一本を選ぶとすれば「ディナーラッシュ」が好きだ。監督のボブ・ジラルディは元々CMの監督であり、短い映像の世界を創ってきた人だから、ひとつひとつの場面がスタイリッシュなCMのように作られている。なによりも監督自身がレストランの経営者であるのだから、映画にリアリティがあるし、戦場のような厨房も凄まじい。まさに労働と生産の場である。もちろん料理が美味しそうなのは言うまでもない。映画のような殺鼠剤入のフィオレンティーナは勘弁してもらいたいが、あのラストシーンのように「映画と旨い料理はあとをひく」と思わせる作品なのだ。

a Bob Giraldi film dinner rush
a Bob Giraldi film dinner rush
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