マルセイユのユニテ・ダビタシオン

マルセイユにユニテ・ダビタシオンと名付けられた建築があります。Unité d’Habitationは、フランス語で「住居の統一体」と「住居の単位」のふたつの意味を持っています。つまりは集合住宅なのですが、現在は一部をホテルとして宿泊できるようになっています。竣工は1952年、設計した建築家は、近代建築の巨匠ル・コルビュジエでした。

マルセイユのユニテ・ダビタシオン
マルセイユのユニテ・ダビタシオン

ホテルはその名も「ル・コルビュジエ」、最寄りのバス停名も「ル・コルビュジエ」、近所に住む人は建築そのものを「ル・コルビュジエ」と呼んでいます。地域で建築家が尊敬され親しまれていることが良くわかります。店舗、郵便局、保育園、プール、体育館を備えた複合的な集合住宅、というより最早ひとつの街です。今でこそ、そのような複合的集合住宅は日本にも多数存在しますが、ユニテ・ダビタシオンがその先駆けでした。

ホテル「ル・コルビュジエ」
ホテル「ル・コルビュジエ」
バス停「ル・コルビュジエ」
バス停「ル・コルビュジエ」

部屋の奥行きは6980mmと十分ですが間口は1720mm、天井高さ2240mmで少々手狭に感じられました。ベッドの幅を測ってみると約1200mmですので、通路状になっている部分は約500mmしかありません。3台ある照明は1台しか点灯せず、シャワーはあるがトイレは共同。これで1泊87ユーロですので高いと感じるかもしれませんが、ル・コルビュジエ建築という価値が上乗せされてると考えれば納得です。

ベランダ側から玄関方向を見る。
ベランダ側から玄関方向。

奥行き1520mmのテラスがついているのですが、マルセイユの街が眺められるし、作り付けのテーブルと椅子が置かれていて、夜な夜な海風に吹かれてビールを飲むのは格別です。この建築に限りませんが、テラスにちょっとした机と椅子が置ける広さがあると、アウトドアリビング的な使い方ができるようになり楽しいものだと思います。

アウトドアリビング的なテラス
アウトドアリビング的なテラス

屋上庭園に行ってみると、海からの風が心地良く、カモメが多数飛んでいて改めてマルセイユが港町だと実感できます。コンクリート打放しの建築ですが、スギ型枠を使用したり、タイルを打ち込んだり、わざと荒っぽいテクスチャーにしたりと何種類もの表現が見られます。コンクリートという単一の素材を用いつつも多様な表現を求めるところに、建築家ル・コルビュジエの横顔が伺えます。

屋上庭園
屋上庭園

ところで、このユニテ・ダビタシオンを含めたル・コルビュジエの建築が世界遺産登録されるとニュースで流れました。東京の上野にある国立西洋美術館もそこに含まれていますが、その一方でコルビュジエの弟子であった前川國男設計による世田谷区役所が解体の危機に瀕しています。貴重なモダニズム建築が次々に壊されていく日本ですが、西洋美術館の世界遺産登録を機にその他の優れたモダニズム建築にも目を向け、安易なスクラップ&ビルドの世界から脱却して欲しいものだと思います。

世田谷区役所
世田谷区役所
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