十条駅西口地区第一種市街地再開発事業

公共工事費が平成10年の14.9兆円をピークについには6兆円を割り込む数字まで落ちてきました。6兆円という数字は昭和53年の水準とそう変わりがありませんし、当時とはお金の価値が違うのだから建築業界は相当厳しい状況にあります。しかしながら、崩壊寸前の年金や健保のために社会保障費に税金をつぎ込むのは仕方のないことですし、今後も公共工事費の縮退が予想されています。

杉並区で公園を潰して保育所にする計画がありました。近隣住民の集会で賛成派の若いお母さんが話している途中でお年寄りがヤジを飛ばす様子を見ると、この国の民主主義はなんと幼稚なのかと思いましたが、保育所を建てても恩恵に与れる子供が少なく、お年寄りも孫が居なければ計画に共感できない現実も感じます。一方で待機児童が大問題とされる今日ですから「なんなんだよ日本」という捩れがあります。この例に留まらず自治体の体力が急速に落ちている中で、未来の公共工事は社会から必要とされるのだろうかと疑問に思う人も多いでしょう。必要な公共事業とそうでないものを確実に見極めなければいけない時代なのです。

日本創成会議によれば東京23区のひとつである豊島区が消滅可能性都市だという話です。人口減少に耐え切れず、もはや将来的に自治体を維持できないというわけです。もっとも都市が消滅するわけではなく、自治体が消滅するのですから「消滅可能性自治体」が正しいのですが。

北区にある十条駅西口前が再開発されます。十条は低層の木造住宅が立ち並ぶいわゆる木密地帯で、庶民的な十条銀座や大衆演芸場を中心とした昭和の香りを残す素敵な街です。私自身、実家から一番近い繁華街ということで、子供の頃から馴染んできた街でした。十条駅前には高層の建物などなく、空が抜けていて気持ちのいい空間でしたが、再開発により高さ150m、37階建て、戸数540戸にも及ぶタワーマンションが建築されることが決まりました。現在の北区で最大高さの建物が95mですから、かつてない巨大な建物が作られてしまうわけです。

空が大きい十条駅西口広場
空が大きい十条駅西口広場

行政としては木密の解消になるし、人口が数千人は増えることが予想されますから、税収増になり喜ばしいのでしょうが、地元の人々からは反対の意見も強かったと聞きます。完成予想図を見ると低層部分に店舗が入ることが伺えます。恐らくはチェーン店のスーパーやドラッグストアにコンビニなどがテナントを構えるのでしょう。薄利多売が基本のチェーン店に対し十条銀座の店舗は個人商店がほとんどです。価格的には対抗できるか難しいところですが、もしも価格競争に巻き込まれれば、またしてもデフレ現象の発生です。

思い出深い十条銀座
思い出深い十条銀座

店舗が併設されれば商店街で買い物をするひとも減ることでしょうし、東京近郊の地方在住者をターゲットにしているマンションと思われますから、東京への人口集中がさらに進むと考えられ、地方には例によって空き家が取り残されます。空き家問題の本質は空き家そのものにあるのではなく、新しい建物が作られることで空き家がさらに増えることにあります。延々と同じことの繰り返し。駅前再開発で成功した例を知りませんが、勝手知ったる街が周囲を巻き込みながら変貌しようとしていることに少々不安を感じずにはいられません。

十条篠原演芸場
十条篠原演芸場
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